食品安全情報:名古屋生活クラブ

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アトピー性皮膚炎での微生物の役割について

論文で紹介します。

The role of micro organisms in atopic dermatitis
アトピー性皮膚炎での微生物の役割
B.S.Baker
Clinical and experimental immunology 2006 144 1-9

アトピー性皮膚炎は、ぜん息やIgE関与の食物アレルギーなどに関係している、一般的な皮膚の病気で、その皮膚の傷害は、環境中の抗原応答に関与しているTh-2細胞が特徴です。

アトピー性皮膚炎の、ここ30年以上にもわたる増加は、産まれてすぐの、微生物との接触が少ないことが原因になっている。

それがTh-1とTh-2細胞のバランスを変えるか、免疫応答でのT細胞の抑制の減少を招くか、などに繋がっているかもしれない。

アトピー性皮膚炎の患者は、生まれつきの免疫と獲得免疫の欠落があり、それらが、バクテリアやカビやウイルスの感染などに対して、高い感受性を持つことに繋がっています。特に、黄色ブドウ球菌の感染に特別に弱く、黄色ブドウ球菌の出す毒素は、毒素に対するIgEの誘導と、th-2細胞、好酸球(白血球の一種)、ケラチノサイトなど、様々な細胞の活性化、などを通して、病気を悪化させます。

マラセジア(でん風菌、正常皮膚微生物叢を構成する酵母菌)によるアレルゲンも、一部の患者の病気の原因と考えられている。

微生物がアトピー性皮膚炎の病因に重大な役割を果たしている 原因遺伝子の感受性や病気の悪化のどちらかか、両方ともにか影響している。



アトピー性皮膚炎は、子供の7-17%が罹患している。

たいてい、最初の2年間に生じ、2/3は大人にまで続く家族で両親の内、どちらかがアトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎を持っている時、高率で子供がADになり、さらに色々なアレルギーの病気を進行させていく。

ADに関与しているらしい遺伝子は、乾癬、IgEリセプター、Th-2サイトカイン、‐中略‐微生物への応答に関与しているリセプターなどです。

大気汚染、室内空気のダニ、などの環境要因や食事の変化などが関与しているが、あまり証拠がない。

より関与しているのは、子供の初期の感染(たぶん抗生物質使用につながるだろう)と、家族サイズの減少(アレルギーの感作は、第一子に多く、大家族の子供には少ない)です。

解説

アトピー性皮膚炎の開始と悪化に皮膚に住みついている正常皮膚微生物叢が関与している。

腸内細菌がアレルギーに大きく関わっている「hygiene hypothesis(衛生仮説、保健仮説)」を支持する論文がたくさん出されています。今回、アトピー性皮膚炎にも正常皮膚常在菌の黄色ぶどう球菌と、マラセジア酵母の関係があります。

「皮膚常在菌は、黄色ぶどう球菌の属する、スタフィロコッカス属や、プロピオニバクテリウム属が大半を占め、密集することで、外界の微生物の侵入を防ぐ働きがあるといわれ」(大阪府立公衆衛生研究所報告)ています。

抗生物質の安易な使用で、腸内細菌を変え、抗菌物質の氾濫で皮膚常在菌のバランスを変えてしまう。はっきりしている、確定の節ではないけれども、アレルギー、アトピーと、微生物との関係は、深い関係がありそうです。

抗菌効果を担っているのは、殺菌剤そのもの(TBZ)であったり、酸化チタンや銀、亜鉛などの重金属系などがあります。どの場合でも、毒性の大小はありますが、毒性は必ずあります。(何せ、微生物が死ぬんですから)安易な使用は、日常的に接する商品であればあるほど、避けた方が良いです。

(2006/08/03 掲載)