過去40年に渡って、アレルギーとアトピーが西洋化された国々で爆発的に増加している。アメリカのCDC(疾病管理センター)によれば、1980年から1994年で75%も増加し、0才から4才に限れば160%もの増加が報告されている。13才から14才の子供では、アメリカでは22%、カナダ、イギリス、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリアでは、28%から32%になっている。
遺伝が、アレルギーとアトピーに影響を与えるが、この著しい増加は、環境因子の変化におそらくよるもので、アレルギー、アトピーのhygiene hypothesis(保健仮説)が出されている。
その様な因子の1つは、先進国の抗生物質使用の増加である。ヒトの疾学研究は、便中の微生物叢とアトピーとの間に関連を見つけている。
微生物を除去した動物は、免疫反応の調節をたくさん欠いている。これらの観察が、抗生物質による胃腸の微生物叢の変化がアレルギー反応を進めやすくするかどうかの問題を提起している。
抗生物質による治療は、菌(カビ)を増加させるという副作用を持ちます。カンジダ・アルビカンスという酵母菌は、ヒト微生物叢の一部であり、口、膣、胃腸管に少ない数で住みついています。
カンジダ・アルビカンス数に影響しているのは、ホルモン、ストレス、生まれつきの免疫、適応免疫などです。
抗生物質処理や、微生物叢を除去したねずみでは、劇的にカンジダ・アルビカンスの感染を受けやすくなります。カンジダ・アルビカンスや他の多くの菌(カビ)類は、プロスタグランジン類似のオキシリピンという分子を分泌します。
プロスタグランジンE2や、プロスタグランジンD2は、Th-1型の免疫反応を抑制し、Th-2型の反応を促進します。(アレルギー反応)
ねずみを5日間、セフォペラゾン(抗生物質)で処理、その後、カンジダ・アルビカンスを投与。微生物数の減少と、カンジダ・アルビカンスの増加、 その後、アスペルギルス・フミガトゥス(ヒトに影響する、最も一般的な室内のカビ)で処理して、アレルギー反応を見た。
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+アレルゲン処理のみ |
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A ↓ |
B ↓ |
C ↓ |
何もなし | インターフェロンのみ上昇 | ひどいアレルギー反応 |
(繰り返し、アレルゲン処理をしてもアレルギー反応は起こらない) | (繰り返し処理はアレルギー反応を強める) |
抗生物質処理 ↓ |
カンジダ(酵母菌)の侵入の可能性を広げる ↓ |
カンジダの胃腸管の侵入と住みつき ↓ |
カンジダによるオキリピンの分泌 ↓ |
免疫をTh-2に代える(アレルギー型) ↓ |
アレルギー反応 |
赤ちゃんの頃の抗生物質の使用や食生活の変化が胃腸に住みついている微生物叢、とくに酵母菌などの菌類の増加を招く。それが免疫をアレルギーの方向に持っていくことが、ねずみでの実験で証明された事は大きいと思います。
免疫をになう、T細胞という白血球が酵母菌などによってアレルギー反応に向かってしまいます。
今回の実験では、アレルギー反応を鼻から抗原(アスペルギルス)を入れ、肺で見ているものです。腸の影響が肺まで伝わっている、全身への影響を示唆するものです。
(2012/06/21 掲載)