食品安全情報:名古屋生活クラブ

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カロリー制限と絶食の繰り返しが脳の老化を抑える可能性がある

論文で紹介します

Caloric restriction and intermittent fasting : Two potential diets for successful brain aging
カロリー制限と次の日の絶食(食べる日と絶食の繰り返し)、この2つの方法が脳の老化を抑える可能性がある
Browen Martin 国立老化研究所 アメリカ
Ageing Res Rev .2006 August ; 5(3) 332-353

歴史上、多くの社会が食料が乏しい時期や宗教的な理由での食事制限が健康に有益であることを認識してきた。

最初の科学的な研究は1935年にマッケイが食の制限が寿命を伸ばすことを見つけました。マッケイはラットに消化できないセルロースを含むエサを与え、平均寿命および最長寿命が伸びることを観察しました。ラット以外にも、ねずみ、しょうじょうバエ、線虫、くも、魚などでも観察されています。

重要なことに、カロリー制限や次の日の絶食は、げっ歯類で糖尿病や心臓病などのリスクも減らします。さらに、ラットを一日おきにカロリー制限して2−4ヶ月育てると化学物質による海馬の神経細胞の障害を減少させました。

(ストレスを受けたときに防御するためにつくられるタンパクにヒートショックタンパク70(HSP-70)とブドウ糖調節タンパク78(GRP-78)という代表的なタンパクがあります)カロリー制限を受けたラットは自由に食べられるラットに比べて脳中にこれらHSP-70とGRP-78が増加していました。以前の研究でこれらHSP-70とGRP-78は神経細胞を酸化的傷害と興奮毒性(神経細胞が過剰に興奮して死んでしまうこと)から守っている証拠があります。

オスラットを用いた長期研究でカロリー制限は平均24時間ブドウ糖濃度を15mg/dl減少させ、インシュリン濃度は50%減少させた。

カロリー制限したラットは、自由に食べさせたラットに比べ、同じ速度でブドウ糖を利用したが、血液中のブドウ糖の効率的な利用とインシュリンに対する反応性をともに高めていると思われる。

インシュリン−ブドウ糖調節システムを老化に大きく強調する理由はインシュリンシグナル系の機能をなくした突然変異体が3つの種(線虫、しょうじょうバエ、ねずみ)で寿命が延びているからです。

解説

食事(カロリー)をたくさん摂ると、血中のブドウ糖が増加し、それに反応してインシュリンも増加し、細胞内にブドウ糖を取り込みます。インシュリンは細胞の受容体に結合し、そこから一連の反応が次々と起こります。このことをインシュリンシグナル系といいます。このインシュリンシグナル系を働かなくさせた突然変異体が3種(線虫、しょうじょうバエ、ねずみ)でいづれも寿命が延びました。このことは、食事(カロリー)をたくさん摂って、血中にブドウ糖を増加させ、インシュリンを増加させることが寿命を「ちぢめている」事を意味しています。食べることは危険性と隣り合っているのです。今の日本人は僕も含めて、ついつい食べ過ぎてしまっているようです。もう少し少なくして満足する食事に変わって行かないと、食べすぎによって起こっている病気(糖尿病、メタボ、アルツハイマー病などの脳の病気もそうみたいです)を予防することは難しいでしょう。

今の栄養学は、不足…カルシウムが足りない…葉酸が足りない…などなど不足のことばかり取り上げていますが、それにもまして必要なのは「食べすぎ」の弊害ではないでしょうか。おかずを減らして、少ない量で満足する食事を各家庭で工夫してください。

量より質です。

(2012/07/12 掲載)