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生活排水から琵琶湖へ流れ込む微量化学物質

『生活排水から琵琶湖へ流れ込む微量化学物質』―蛍光増白剤の研究報告―
早川和秀・山路修久(1)・高田秀重(1)・山元博貴(2)・藤原学(2)
(2)龍谷大学理工学部?(1)東京農工大学農学部 琵琶湖研究所所報

これは、生活排水として琵琶湖へ流れ込む蛍光増白剤の分布や濃度について検討した研究報告です。

蛍光増白剤とは、紫外線を吸収して青紫色光線を発する化学物質であり、製品を白く鮮やかに見せる染料として、衣料用合成洗剤や衣類や紙やプラスチックなどに添加されています。また、皮膚刺激やアレルギー反応を引き起こす化学合成物質とされ、原料であるスチルベンには内分泌攪乱作用があります。蛍光増白剤は下水処理場において完全に除去できず、河川から検出される特徴から、蛍光増白剤が生活排水に含まれる難分解性化学物質の指標と成り得ることが注目されています。著者らは国内で主に使用されている蛍光増白剤の内、DSBPとDAS1の河川水中および湖水中の濃度や分布について検討しています。

まず、野洲川流域(本流および各支流の計15ヵ所)から採水し、調査したところ、本流に比べ支流の方がDSBPおよびDAS1の濃度が高いことがわかりました。このことから河川水中の蛍光増白剤の濃度は河川水量による希釈効果と流域の未処理生活排水量に依存すると考えられました。

次に、琵琶湖の北側と南側で採水し、DSBPとDAS1の濃度を調査し比較したところ、北湖に比べ南湖の方が数倍濃度が高いことがわかりました。これは、都市河川、下水処理排水が集中する点で南湖の蛍光増白剤濃度が高くなると考えられました。

最後に、湖底堆積物中の蛍光増白剤の分布について調査したところ、蛍光増白剤濃度は堆積表層に向かって顕著に増加していたことから、琵琶湖では蛍光増白剤の負荷量が年々増加傾向にあると考えられました。

今回検出された蛍光増白剤の濃度は非常に低く、毒性に関して危険性はほとんどないと判断されたが、低濃度ながら湖底まで到達していることが明らかになりました。これは蛍光増白剤だけでなく生活排水に含まれる難分解性の人工化学物質が琵琶湖に拡散している可能性を示しています。

(2007/5/10 掲載)