ここ10年で、放射線、化学物質、内分泌かく乱物質のような環境毒物による、世代を越えて(trangenerational)の影響が報告されている。
放射線による、世代を越える影響は、最初に認められ、その中のいくつかは生殖系列を通して何代にも伝わっていったことが示された。これらは、次の世代での突然変異と、ガンの形成にも、しばしばつながった。
内分泌かく乱物質のような、環境毒物も、親の世代での曝露につづき、子供(F1)に影響することが示されてきた。
始源生殖細胞(PGCs)のDNAのメチル化状態の最近の研究では、PGCsが生殖堤に下降するにつれ、脱メチル化が始まる。
生殖腺で性の決定期の間に、生殖細胞は、生殖細胞の性の決定に関わる再メチル化を行う。
内分泌かく乱物質、ビンクロゾリン(ワイン栽培に使われる殺菌剤)、メトキシクロル(農薬)は、精巣の形態形成を、生殖細胞が再メチル化を行う時と同時に変える。
生殖腺の性決定時の内分泌かく乱物質の一時的な曝露は、大人の精巣での、精子形成細胞のアポトーシス(死)の上昇と、精子濃度の減少につながる。そして、その影響が4世代先まで続いていく。この、世代を越えての影響は、DNAのメチル化の変化によっている。
F2世代の内分泌かく乱処理の子孫のオスと未処理のメスとの戻し交配での、子供(F3)では、精子の運動性の低下、精子形成細胞のアポトーシス(死)の増加、が同様に起きたが、逆の交配(処理のメス×未処理のオス)では、起きなかった。
(2012/07/20 掲載)