水俣病の後、新潟に続く第3の水俣病の可能性があるのではと、全国的に水銀汚染調査が実施されました。
そのとき、山口県徳山湾、新潟直江津海域、鹿児島湾でも水銀汚染魚の存在が確認されました。
しかし、徳山湾と直江津海域には水銀を使用する事業所(製紙工場)があったのに対し、鹿児島湾にはそのような事業所はありませんでした。
では、鹿児島湾の水銀汚染源な一体何だろうか??
すると鹿児島湾の入り口から奥に行くほど水銀量が多いことがわかりました。
海底で火山活動している場所の水銀濃度は0〜100mまでは水深が深くなるほど高くなるというわけではなく、水銀濃度は水深に関係していませんでした。0〜200mまでの水銀濃度を見ると水深が深くなるほど水銀濃度も高くなっていました。また、水深200m地点の水銀は表層まで届いていないこともわかりました。
鹿児島湾産 | 1977年 | 1.23(0.72〜2.82) |
2001年 | 0.40(0.11〜0.77) | |
大分産 | 2001年 | 0.14(0.04〜0.37) |
鹿児島湾産タチウオの総水銀レベルは経年的に低下しているが、2001年において開放的海域の大分産のものと比較すると、鹿児島湾産の総水銀レベルの方が高いことがわかりました。
火山活動以外に水銀汚染源があるのではないか。
そこで
カサゴについてはDDTs濃度と総水銀濃度との間に統計的に有意な相関関係があることがわかりました。
DDTの他にも農薬が海水中に蓄積している?
実際に1955〜1970年代後半まで稲熱病(いもち病)対策としてフェニル水銀系農薬(セレサン石灰)が大量散布されていました。
鹿児島湾の主な水銀汚染源は火山活動によるものでなく、水銀系農薬が最も疑われました。
水銀汚染は製紙工場が排出した水銀によるものだけではなく、農業に使われた水銀系農薬によるものもあることが推測されました。鹿児島湾は中に入り組んでおり、海流で水銀が流されることなく、ずっと留まっている状態なのでしょう。
50年近く前の農薬が現代の水銀汚染に関わっているかもしれないということは恐ろしいことです。