リン酸肥料、鉄-マンガン-亜鉛などを含む微量要素肥料が収量を上げるために、定期的に散布されています。しかし、これらの肥料にはヒ素、カドミウム、鉛などが含まれています。カルフォルニア州食品農業部(CDFA)によると、カルフォルニア州で販売されているこれらのリン酸肥料と微量要素肥料にはヒ素が0〜85mg/kgの範囲でカドミウムが0〜5g/kg、鉛が0〜73.5g/kgの範囲で含まれています。一回の散布では、濃度の上昇などは検出できませんが、繰り返し散布することで時とともに、徐々にこれらのヒ素、カドミウム、鉛などが上昇していきます。研究者達は、リン酸肥料の散布がとくにカドミウム濃度の上昇を起こしてしまっていることを実証してきました。野菜の栽培は他の作物に比べかなり多量の肥料を必要としているので、野菜の畑には肥料に由来するこれらの重金属の蓄積という最悪の結果が考えられます。例えば、カルフォルニア州インペリアルバレーでは、野菜の生産では1ヘクタール当り563kgのリン酸アンモニウムを使っています。
土壌に重金属が増えると、食物連鎖を通して重金属の濃縮が起こることがあります。土壌中の濃度に比例して、植物体中の重金属濃度の増加が報告されています。ヒ素、カドミウム、鉛が作土中に増加する事から生じる危険性は健康に対する懸念をもたらしています。本研究の目的は、1967年にブラッドフォードが採取したカリフォルニア州50ヶ所の土壌(ベンチマーク土壌…基準土壌)を2001年に再採取し、それらの重金属量の測定をすることと、カリフォルニア州の野菜生産7地域の作土での重金属の分析と、カリフォルニア州での作土中のヒ素、カドミウム、鉛の増加へのリン酸肥料と微量要素肥料の関係を明らかにする事です。
野菜生産7地域から1000以上の作土のサンプルを分析したところ、 重金属濃度が上昇していました。
リン酸の増加はリン酸肥料との、亜鉛の増加は微量要素肥料との関係が強いことがわかりました。
ヒ素、カドミウム、鉛が増加しており、リン酸と亜鉛の増加と関係していた (リン酸肥料、微量要素肥料、両方の関与)
ヒ素が増加しており、亜鉛が関係していた (微量要素肥料の関与?)
ヒ素、カドミウム、鉛の増加とリン酸、亜鉛との関係が見られない
1967年基準土壌 | 2001年基準土壌 | 2001年作土 | ||||
平均値 | 最高値 | 平均値 | 最高値 | 平均値 | 最高値 | |
ヒ素 | 8.8 | 20.5 | 7.6 | 16.6 | 7.6 | 18.4 |
カドミウム | 0.18 | 0.44 | 0.22 | 0.53 | 0.50 | 2.38 |
鉛 | 12.0 | 25.0 | 14.6 | 26.8 | 15.6 | 62.2 |
リン酸 | 520 | 1127 | 616 | 1503 | 844 | 2620 |
亜鉛 | 69.2 | 143 | 75.9 | 124 | 68 | 145 |
会社の田んぼに肥料と土壌改良材を入れようと調べていたらケイ酸の土壌改良材やリン酸肥料は製鉄会社が鉄を作るときに廃棄する資材から作っている場合が多いことがわかりました。食品安全委員会のホームページなどで資料をとると、それらの肥料や改良材中に高濃度の重金属(ヒ素、カドミウム、鉛、チタン、ホウ素)などが含まれていること、健康に対する影響はまずないと書かれていました。どうも信用できないので各国の論文を見たら、やっぱりいろんな論文がありました。この事情は日本だけのことではありませんが、関心を持っている科学者が日本に少ない事は確かです。
それにしても、農家は食い物にされていると、つくづく感じます。これらのこと以外にも肥料は知られていないだけで問題の多い所です。下水汚泥肥料なども知らないうちに使っているのです。不純物の量の表示や原材料の表示がない事が一番の問題です。名古屋生活クラブに出荷している農家の多くは少数の例外を除いて、肥料の出所がはっきりしています。今後は、この少数の農家のチェック、及び肥料の切り替えを進めて行きたいと考えています。
(2008/9/9 掲載)