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EU(ヨーロッパ共同体)の水政策(2001年)

名古屋生活クラブの考え

EU(ヨーロッパ共同体)の水政策(2001年)

ヨーロッパ委員会は、優先的にしめだしていく32種類の物質のリスト(そのうち、11種類は、危険物質として)を作った。危険物質として認定された物質は、今後20年以内に水環境への排出を全て無くす手段を取る。

 

32種のリスト(分解性が悪く水を汚染している物質です。)
  成分名 危険性認識 使用目的
1 アラクロール なし 除草剤
2 アントラセン とりまとめ中 原料 木材防腐剤
3 アトラジン とりまとめ中 除草剤
4 ベンゼン なし 原料
5 臭化ジフェニルエーテル あり 難燃剤
6 カドミウムと化合物 あり バッテリー
7 C10-13 塩化アルカン あり 金属作業液
8 クロルフェンビンフォス とりまとめ中 殺虫剤
9 クロルピリフォス とりまとめ中 殺虫剤
10 1.2-ジクロロエタン なし 塩ビモノマー生産
11 ジクロロメタン なし 溶剤
12 DEHP とりまとめ中 プラスチックの可塑剤
13 ジウロン なし 除草剤
14 エンドスルファン とりまとめ中 殺虫剤
15 ヘキサクロロベンゼン あり  
16 ヘキサクロロブタジエン あり  
17 ヘキサクロロシクロヘキサン あり 殺虫剤
18 イソプロツロン なし 除草剤
19 鉛と化合物 とりまとめ中 バッテリー
20 水銀と化合物 あり バッテリー 歯の詰め物
21 ナフタレン とりまとめ中 原料 木材防腐(クレオソート)
22 ニッケルと化合物 なし ステンレスなど
23 ノニルフェノール あり 材料、合成洗剤
24 オクチルフェノール とりまとめ中 材料 合成洗剤
25 ペンタクロロベンゼン とりまとめ中 農薬原料
26 ペンタクロロフェノール とりまとめ中 殺菌剤
27 PAH(多環芳香族炭化水素) あり 燃焼生成物
28 シマジン なし 除草剤
29 トリブチルすず化合物 あり 船体塗料
30 トリクロロベンゼン とりまとめ中 原料
31 クロロホルム なし 原料
32 トリフルラリン とりまとめ中 除草剤

 

この中からアトラジンとシマジンを取り上げます。

ヨーロッパ共同体の飲料水の基準は、0.1ppb(1つの農薬で)、全ての農薬の合計で0.5ppbです。

日本の水道法では、毒性評価値(たとえばアトラジン10ppb シマジン3ppb)を用いて相対危険性を算出します。この場合、分かりやすく言うと、他の農薬が検出されなかった場合、アトラジン10ppbで法的に違反という事になります。ヨーロッパ諸国では、とくにアトラジンが0.1ppbという許容量を越してしまうことがあるため、ヨーロッパ共同体は2003年アトラジンを禁止しました。

日本の水系は、アトラジンよりシマジンにより汚染されています。

それ以外には水田用の除草剤(シメトリン、ブロモブチド、など)に汚染されています。

滋賀県琵琶湖環境科学研究センターによる、河川水の汚染調査では、シメトリンが0.03ppb〜3.6ppbと一年を通して汚染しています。

この汚染は浄水場ではほとんど浄化できないため、水道水の汚染も同程度と考えられます。

ヨーロッパで禁止されたアトラジンには、環境ホルモン作用もあります。

 

カリフォルニア大学のヘイズらの研究によると、アメリカ中のかえるのオスの精巣に卵子ができていることが報告されています。この研究に対し、アトラジンのメーカーである、シンジェンダ社を始め、異論もあります。

しかし、九州大学の研究では、アトラジンがヒトの培養細胞で女性ホルモン(エストロゲン)活性を上げる仕組みが分子レベルで解明されています。(Environmental Health Perspectives. 115 May 2007)

さらに、アトラジン、シマジンには、ラットでの発がんを示す証拠があります。

(アメリカ環境保護庁は、発ガンは、ラットにのみ固有であり、ヒトには当てはまらないと考えています。)

しかし、アトラジン、シマジンには、ホルモンかく乱作用が明らかに認められているため、多くの研究者は、ホルモンが関係しているガン(乳がんなど)への関与を疑っています。これは、根拠のある事で、実際に培養ヒト乳ガン細胞はアトラジンによって増殖を加速させます。(J.Proteome Res 2009 Dec 5485-96)

さらに、妊婦がアトラジンを暴露すると、妊娠期間が短くなるというパーデュー大学の疫学研究(Environmental Health Perspect 2009.1619-24)もあります。

 

木曽川の水は、きれいに見えるけど、実際に測定すると、色々な毒物が検出されます。ヨーロッパの様に厳しい基準を課して、水をきれいにする努力を上流、下流の人々が協力していくことが、現実的に必要な事です。

(2012/07/30 掲載)