食品安全情報:名古屋生活クラブ

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ミコバクテリウムのパラ結核菌

論文で紹介します

MYCOBACTERIUM AVIUM PARATUBERCULOSIS:Infrequent Human Pathogen or Public Health Threat?
ミコバクテリウムのパラ結核菌:稀にしか起きない人への病原体か、公共衛生への脅威か?
A Report from the American Academy of Microbiology

クローン病は被害が甚大で、原因・治療法を見つけるのが難しい。北アメリカで80万人が感染し、下痢・出血・腸の障害など、胃腸の症状に苦しんでいる。数ヶ月、時には数年続く様々な組織の症状で長期に渡って日常生活に支障をきたしてきた。

研究員・臨床医は、一連の要因が揃うとクローン病が発症するとしている。ある遺伝的形質を受け継ぎ、環境の刺激を受け、過剰な免疫を起こし、炎症を起こすことである。その組み合わせにより患者の病症は幅広く様々である。患者、家族、地域、健康管理システムに対するこの病気の経済的・社会的なインパクトは大きい。

長い間、腸の慢性炎症だと考えられており、炎症を抑える治療が行われていたが、クローン病自体を治療するものではない。炎症は普通、体外由来の生物、無生物(破片)、悪性の細胞(たとえばがん細胞)、微生物(バクテリア、ウイルス、菌)などによって起こる。炎症の原因が排除されるまで、白血球が殺菌し続ける。原因が排除されれば炎症が収まる。

遺伝子の違いによって、ある種のバクテリアに反応できない人がいて、環境要因が関係していると思われる。クローン病は微生物により引き起こされた疑いのある場合がある。クローン病はある特定の病気というよりは症候群に近く、幅広い症状を持ち、原因も1つにしぼれない。ミコバクテリウムと大腸菌(Eschelichia coli)の変異体が考えられる。感染原因が1つではないことで、原因と治療法を見つけようにも何にしぼればいいのかわからない。

原因の1つに、家畜のもつMAP(Mycobacterium aviumの亜種paratuberculosis)の可能性があり、クローン病患者は通常の人の7倍の割合で血中や組織にMAPをもっているため、MAPがクローン病と関連があることは明白である。重要なのは、MAPがクローン病を引き起こすのは、直接的なのか間接的なのか、ということである。もしそうであれば、感染の経路、防除法、治療法を決定する必要がある。

アメリカでの流行ががん患者の数を超えたにもかかわらず、クローン病は集中的に研究が行われない。米国微生物学会(AAM)は様々な分野の専門家を召集して会議を行い、クローン病にMAPが確かに作用する疑いがあげられた。

  • ●MAPは汚染された土壌と水に存在し、クローン病の環境要因と関係し合って発病にいたる。
  • ●MAPはクローン病と似ているヨーネ病(家畜等動物の遺伝病)の原因であり、病因がわかっているので、クローン病の要因と病気との関係を与えてくれる。
  • ●MAPは低温殺菌では死滅せず、アメリカとEUで売られているミルクから検出されている。ヨーネ病に感染した家畜の乳製品や肉からもMAPが見つかっている。クローン病患者のMAPへの感染ルートとなっている。
  • ●あるミコバクテリアに有効な抗生物質は、MAPに特化していない抗生物質であっても、クローン病の病症が緩和される場合がある。

これらの調査によって状況的にクローン病の原因にMAPが含まれることは間違いなさそうである。

一方で、決定的にクローン病の原因であるとか、大多数のクローン病の原因であるかは、組織自体のわかりにくい特性によって妨害されている。MAPに近づける、幅広く利用可能な有効な臨床的方法わかっていない。もっとも重要なのは、資源、財政、技術の不足であり、MAPが病気の過程に含まれるかどうかを決めるが必要である。

現状は、今も続いているMAPに感染した家畜の生産と流通が重要な課題である。早期発見と食糧供給の対策が必要である。

@人と動物間の感染がどのように起こるか、A人はMAPによって感染するのか、を解明し、原因と治療法を見出す必要がある。

(2012/07/30 掲載)