食品安全情報:名古屋生活クラブ

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ナノ化酸化チタンはマウスに悪性的な腫瘍を生じさせる

論文で紹介します

Nano-scaled particles of titanium dioxide convert benign mouse fibrosarcoma cells into aggressive tumor cells
酸化チタンナノ粒子は、マウスの良性線維肉腫を悪性的な腫瘍に変化させる
Onuma K 山形大学
Am J Pathol.2009 Nov:175(5):2171-83

ナノ粒子は、商品として、医療製品として広まっています。しかし、発がん性については明らかになっていません。そこで私達は、腫瘍形成性があまりなく、転移性を持たないQR-32線維肉腫に対するナノ化酸化チタンの影響を調べた。QR-32線維肉腫とナノ化酸化チタンもしくは、ステアリン酸で表面コートしたナノ化酸化チタンを一緒に皮膚下に移植したマウスは、どちらも腫瘍を形成しなかった。しかし、先にナノ化酸化チタン処理をしてから、QR-32線維肉腫を移植すると、表面コートしていないナノ化酸化チタンの方は、肉腫を形成し転移性を獲得した。(表面コートナノ化酸化チタンの方は腫瘍を形成しなかった)。どちらの処理も組織的、及び炎症性サイトカインメッセンジャー RNA発現に違いはみられなかった。しかし、表面コートナノ化酸化チタンは、活性酸素種を細胞がない条件では多く作り出した。両方のナノ化酸化チタンは細胞内で活性酸素種を形成したが、表面コートナノ化酸化チタンはより強い生成をし、QR-32線維肉腫に細胞毒性を示した。さらに表面コートナノ化酸化チタンは、多核細胞を発生させた。酸化チタンの毒性を生き残った細胞は、腫瘍形成性を獲得した。これらの結果は、ナノ化酸化チタンは、活性酸素の生成によって良性の腫瘍を悪性腫瘍に変化させる力を持っていることを示している。

解説

化粧品で使われている酸化チタンはナノ化されており、そのままの物や表面をアルミニウムやステアリン酸などでコート(おおわれている)されているものなどがあります。今回の実験では、コート、未コート、いずれの酸化チタンも、細胞内で活性酸素を発生させること、又それによって細胞に対して毒性があること、又その毒性を超えて生き残った良性腫瘍が悪性腫瘍に変化することを示しています。皮膚に塗ったナノ化酸化チタンは、体内に浸透していかないという論文もありますが、傷んだ皮膚からは浸透するという論文もあります。日焼け止め(サンスクリーン)に使われているナノ化酸化チタンの安全性は、まだ発がん性があると結論できるわけではありませんが、予防原則として、取り扱いをやめるべきなのか正直困惑しています。酸化チタン以外の日焼け止め(サンスクリーン)の成分として酸化亜鉛や紫外線吸収剤(ベンゾフェノンなど)もありますが、どれも毒性が高いのでおすすめできません。服や帽子などの手段で日焼けを防止するのが現実的です。