果物と野菜の摂取がガンに対する影響をどう変えるか、集中的に疫学研究がなされ、アメリカ農務省、アメリカガン協会(American Cancer Society)、アメリカガン研究協会(AICR)などの機関による「摂取のすすめ」がなされている。
1日に2カップの果物と、2カップ半の野菜の摂取がガンにかかるリスクを減らす、とすすめられている。2006年には、アメリカ国内で、前立腺ガンは、新しい患者の33%、死者の9%を男性で占めている。
ほとんどの細胞生物学や実験ガン学の研究は、果物や野菜の特定の化学物質を調べてきました。例えば、β−カロテンは、「α−トコフェロール(ビタミンE)、β−カロテン ガン予防研究」「カロテン、レチノール(ビタミンA)効果試験」で、その効能は否定されました。別のアプローチとして、食品全体の効能を調べる研究は、食品の化学成分の複雑性、内容の変動などの問題もあり、あまりされてきませんでした。
大規模な(前向き)疫学研究から、トマトの、特に加工トマトが1週間に5回から7回の摂取で30%から40%も前立腺ガンのリスクを下げることを見出しました。又、介入試験の結果は、前立腺ガンの発ガンに関係している、バイオマーカーの数値がトマト製品の摂取によって変動することを見ています。
発ガン物質と(男性ホルモン)を使った研究は、フリーズドライしたトマトパウダーの抗ガン効果は、リコペン(トマトの中の一成分)のみでは、説明できないことを、又、そのトマトのパウダーがより長い生存(ガン死の減少による)をもたらした。リコペンを含むエサのみでは、その様な事(ガン死の減少)が見られませんでした。ほとんどの学者達は、リコペンに関心を集中していますが、トマトの中には、いろいろな抗ガン効果を持つ植物化学物質が含まれています。ブロッコリーの様なアブラナ科植物と前立腺ガン(抑制)も最近の疫学研究から、浮かび上がっています。HPESコホート研究では、組織内の前立腺ガンを、アブラナ科植物の摂取が12%減少させるなど、いくつかの研究があります。
ブロッコリーに含まれている抗ガン効果を示す、スルフォラファンを、ねずみに投与した実験では、ガンの体積が対照では207mm3に対して、スルフォラファン投与では、90mm3まで縮小し、重さでも、対照の4分の1にまで減少しました。今回の実験は、移植前立腺ガンをラットに移植し、フリーズドライしたトマトパウダーとブロッコリーパウダーを与え、ガンに対する影響を見ました。
ガンを移植する1ヵ月前から、エサを変え、22週間与え、ガンの大きさ、マーカーの数値を比較した。
ガンの重さ 対照を100として |
前立腺中 リコペン量 (ナノモル/g) |
|
@対照 |
100 |
ND |
A抗前立腺ガン薬フィナステライド |
86 |
ND |
B23ナノモル リコペン |
93 |
0.1 |
C224ナノモル リコペン |
82 |
0.9 |
D10%トマト |
67 |
0.5 |
E10%ブロッコリー |
58 |
ND |
F5%トマト 5%ブロッコリー |
70 |
0.3 |
G10トマト 10%ブロッコリー |
48 |
0.4 |
NDは検出限界以下
生体を活性酸素などの害から守る、ビタミンC、E、β-カロテン、リコペンなどの働きが知られ、サプリメントとして広く使われています。サプリメントの効果は、否定されたり、逆に死亡率を上げていることさえ示す研究も数多くあります。
今回の実験は、トマト、ブロッコリー、いずれもフリーズドライして粉状にしてラットにエサとして与えて、移植した前立腺ガンの変化を調べたものです。
10%トマト、10%ブロッコリーの組み合わせでは、なんとガンが52%も減少したのです。これは、リコピンの作用のみではありません。トマトにもブロッコリーにも様々な植物性化学物質が存在し、それらの働きでガンが減少したのです。今回の実験は、サプリメントよりも、食品全体をきちんと摂ることの重要性を思い知らせてくれます。