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プリオン遺伝子の型によらず BSE感染はありうる
◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆

Predicting susceptibility and incubation time of human-to-human transmission of vCJD
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のヒト=ヒト感染の感受性と潜伏期間
J. Manson 2006 ランセット オンライン

イギリス 動物保健研究所(国立クロイツフェルト・ヤコブ病かんし)

 1995〜2000年イギリスで切除された扁桃腺と虫垂のサンプル12674個のプリオン遺伝子にかんする最新の研究は、英国内でのBSE感染者数を100万人あたり237人と推計しています(5000万人の人口なら1万1850人)。この数字は、現状の変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)患者数162人を大きく越えることはないとする定説をはるかに上回ります。
vCJD患者のプリオン遺伝子を分析すると、129番目のアミノ酸がすべてメチオニンでした。ここから、「メチオニン・ホモ(両親由来のそれぞれの遺伝子がメチオニン)の人だけがvCJDにかかる」とされ、BSE感染者=将来のvCJD発症者についてきわめて控えめな数字が見積もられたのです。
 しかし、次の事実は重要です。最近vCJD患者の赤血球輸血を受けた人が、症状の潜伏期間中に亡くなりました。解剖の結果、輸血によってBSE感染していたことがわかり、遺伝子型がメチオニン=バリンのヘテロ型だったことから、ヒトからヒトへのBSE感染はメチオニン・ホモに限定されないことが判明したのです。

プリオン遺伝子は種ごとにいろいろな型があります。同一の種内部でもいろいろな型があります。BSE感受性(感染する確率)の高低は、そうした型のちがいに由来します。ただし、その正確なメカニズムは突き止められていません。
◆ J.マンソンさんの論文からわかること ◆

プリオン遺伝子の型によらずBSE感染はありうる

BSEが種の壁を超えたのが、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)です。種の壁があるので、BSEはヒトには“感染しない”といわれていましたが、感染は起こりました。そして生じたのが「vCJD」です。
いったん種の壁を越えると、感染が非常に起きやすくなります。プリオン遺伝子129番目のアミノ酸がメチオニン・ホモの個体が感染を受けやすいといわれていましたが、今回の実験ではどの型(メチオニン・ホモ、メチオニン=バリン・ヘテロ、バリン・ホモ)でも感染が起こりました。

無数の潜伏患者がいるのではないか

このことが潜伏期間の長さに関係しているのか、別の症状のヤコブ病につながるのかは不明です。しかし、はっきりと分かることは、症状が出ていない多数の潜伏患者の存在が予測できることです。輸血や外科手術などによる医療が原因でvCJDを発症する可能性が、この実験結果から分かります。
ニューギニアの人食いの習慣から生じた「クールー」などのプリオン病の潜伏期間は40年にもおよぶことが報告されています。プリオンは高等動物にはすべて存在し、酵母菌にも同様なタンパクが存在しています。

「死者数は少ない」「ヒトにはうつらない」などの断定的な言い方は科学的ではありません。まだ分かっていないことが多すぎるのです。(伊沢)
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