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塩素処理した水道水と発ガンについて
◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆
Drinking Water Mutagenicity and Gastrointestinal and Urinary Tract Cancers
塩素処理した水道水と発ガンについて
: An Ecological Study in Finland
American Journal of Health, 1994, Vol. 84, 1223-1228

水道水を殺菌するのに、塩素化合物が使われています。それによって、水道水を介して伝染する病気がほとんどなくなりましたが、水道水を塩素処理すると様々な化学反応が起こり、トリハロメタン等、生物に有害な物質(例えば、遺伝子に悪影響を与える)ができてしまいます。この論文は、1967〜1986年のフィンランドで過去の水道水の塩素処理履歴とガン診断データを参考にして、塩素処理した水道水を利用している人々の間で、利用しない人に比べて、膀胱ガン、腎臓ガンの発ガン率が高いことを示した論文です。




解説

  • *All:フィンランド国内全体のデータを使用
  • *Mutagenic Water:遺伝子に悪影響の出る塩素化合物を含んだ水道水を利用している地域に絞ったデータ
  • *Risk Ratio:値が1より大きいと発ガンリスクが高く、1以下だとリスクは低い(影響はない)

計算式は (a/b)÷(c/d)

  • a:塩素処理した水道水を利用していたがん患者数
  • b:塩素処理した水道水利用者総人口
  • c:塩素処理した水道水を利用していないガン患者数
  • d:塩素処理した水道水を利用していない総人口

*Confidence Interval(信頼区間)

  • 二つの値が1を挟んだ値であるとき、 Risk Ratioが1より大きくても、塩素処理した 水道水が原因であるとは言えない。
  • 枠で囲ったデータが統計学的に、遺伝子に悪影響を与え る物質を含む水道水の利用が、発ガンと関係しているとい える。



解説

  • *男性で発ガンリスクが高いのは、男性は飲料水摂取量が多いためと筆者は考えている。
  • *75歳以上の人々にで発ガンリスクが高くなる理由はおそらく、体内に有害物質が蓄積していくためか、発病までの潜在時間が長いからと思われる。


  • 水道水を塩素処理することによってできた化学物質が、腎臓や膀胱の発ガンリスクを高めることが、この論文で示されたが、アメリカでも同じように、塩素処理した水道水を利用した人々に膀胱がんの発ガンリスクが高くなることが報告されている(J Natl cancer Inst. 1987; 79, 1269-1279)。
  • 水道水の塩素処理は塩素が消毒の効果が高く、効果が続く時間が長い、大量の水を簡単に消毒できる、というメリットがあり、世界で広く採用されています。消毒剤として、液体塩素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどが使われています。高度経済成長とともに、川や湖、地下水の汚染が進むことによって、消毒塩素の使用量が増加しました。その結果、水道水中に発がん性など遺伝子に悪影響を与えるトリハロメタンが発生するようになりました。トリハロメタン等の有害物質発生を抑えるために、現在、多くの水道水処理場では前塩素処理の変わりに、微生物処理、オゾン処理、粒状活性炭処理を行っています。しかしながら、最終的に塩素処理を行っています。塩素に変わる消毒剤として、二酸化塩素が注目を集めていますが、二酸化塩素は不安定な物質で、水溶液中ではすぐに亜塩素酸イオンになります。この亜塩素酸イオンの安全性についてはたくさんの報告がありますが、発がん性や生殖器官への悪影響等々人体に悪影響を与える報告もされいています。
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