HOME食品安全情報
家畜の粘膜免疫システムと粘膜寛容の発達
◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆
The postratal development of mucosal immune system and mucosal tolerance in Domestic animals.
家畜の粘膜免疫システムと粘膜寛容の生後の発達
Miak Bailey ブリストル大学(イギリス)
Vet Res.37(2006)443-453

粘膜寛容(mucosal tolerance)の定義は、「局所(粘膜)において無害の抗原に対しての(生体の)炎症反応(免疫反応)が起きないこと」とされています。ねずみの実験で繰り返し実証されていることは、新しい抗原タンパクを経口的に(胃管注入、食べ物、飲み水として)摂取した場合、同様な抗原をアジュバンド(免疫の働きを強める物質)と共に注射しても、ほとんど反応(免疫)が起きないことです。

しかし、経口免疫寛容(oral tolerance)と粘膜寛容(mucosal tolerance)が同じ事でない部分もあります。

第一に、新しい抗原タンパクはしばしば粘膜でのIgAの反応につながっていることがあります(局所的な免疫応答)が、全身には炎症が及んでいない事があります。

第二に、げっ歯類においては、オーラルトレランスの程度は遺伝的に随分影響を受けることがあります。ある種はよく寛容するが、他の種では全然といった具合に。しかし、その場合寛容が起きなかった種でも、エサの成分にアレルギー反応を起こしている様子はありません。

第三に、オーラルトレランスが生じるためには、その投与量が重要で、多いとオーラルトレランスを生じ、一方、少ないと免疫反応が始まってしまうのです(これがアレルギー反応で、普通の感覚と逆です)。

最後に、オーラルトレランスを発達させる能力は、げっ歯類の場合、年齢と(腸内)細菌そうに曝露されることで発達していきます。



解説

・食物アレルギーがどうして起きるか分かっていません。
治療法など混乱していると思います。そういう時ほど、基本に立ち返ってどこまでわかっているのか、“はっきりしているところ”、“あいまいなところ”、区別して考える事が重要だと思います。口から摂取した食品は、免疫反応を起こさない、「経口免疫寛容(オーラルトレランス)」その腸内反応ともいうべき「粘膜寛容(ムコーザルトレランス)」というそれぞれの免疫細胞は、無害な共生細胞(腸内細菌叢)には免疫反応を起こしていないといわれています。

・「外敵」と「免疫系を発達させる共生菌」
免疫細胞による「無害菌」「有害菌」の識別や、動物の種による遺伝系統による差は見られますが、共通している部分も数多く見られます。 ほとんど無防備という生まれたばかりの状態から、免疫系を発達させていくのに共生細菌が必須だという事が大きいと思います。この論文にもよく出てくる「細菌叢の無い」ねずみ、豚、実験的にも豚の場合は実用(SPF系、無菌豚)としても有名です。免疫をになう、Ig(イミュノグログリン)分子の多様性は、外敵の多様性に対するものです。そのIgの多様性が「細菌叢のない」豚では少ない。発達が悪いねずみの場合は、オーラルトレランスを発達させていません。

・菌に曝露する頻度を高めてみては
食物アレルギーの場合、制限食をすることが多いわけですが(さぜるをえない場合も多くありますが)、妊娠中や哺乳期にまで制限することは、逆効果かもしれないことを示唆した実験もあります(雌の豚にオブアルブミン(卵タンパク)を投与した実験)。いろいろな論文を読めば読むほど、腸内細菌の重要性を感じます。食物アレルギー、アトピーの急激な増加と合わせて考えると、アトピー、アレルギーの「衛生仮説・・・ハイジーンセオリー」無害、有害合わせて、菌に対する曝露が低いこと、及び抗生物質使用による腸内細菌の滅菌などが浮かび上がってきます。
HOME食品安全情報
名古屋生活クラブ 2009 Copyright NAGOYA SEIKATSUCLUB,INC. All Rights Reserved