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濃厚飼料で太った牛には肝臓障害が起きている?
◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆
Comparison of plasma metabolite concentrations and enzyme activities in beef cattle raised by
different feeding systems in Korea, Japan and New Zealand
血しょう中の代謝物量(インシュリン、グルコース、コレステロール、乳酸など)と 酵素活性の韓国、日本、ニュージーランドの牛肉での比較
Mori A 日本獣医生命科学大学
J vet Meal A Physiol Pathol Clin Med 2007 scp;54(7):342-5

実験内容

成長期には大量の干草を与え、仕上げの時期には大量の濃厚飼料(とうもろこしなど)を与え、
舎飼いで育てる日本式給餌システムの日本と韓国の牛と、放牧で育てるニュージーランドの牛とで、
血しょう中のグルコース、コレステロール、インシュリンや酵素活性を比較しました。


結果

日本の牛肉の評価システムによると、韓国の牛肉はランク3.3。日本の牛肉は3.6でした。
(このランクが高い程、霜降りになっているため、韓国より日本の方が霜降りである) 韓国の牛は、日本の牛に比べて、遊離脂肪酸、乳酸、乳酸デヒドロゲナーゼ、りんご酸デヒドロゲナーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST:別名GOTといい、数値が高いと肝臓障害が疑われる)が有意に高い値を示しました。
韓国の牛の血しょう中乳酸値は8.4ミリmol/Lで、乳酸アシドーシス*でみられるのと同程度でした。
(*:濃厚飼料過多によって第1胃内異常発酵が起こり過剰な乳酸が生成され、血液が酸性化している事がうかがわれる。訳者注)
血しょう中の乳酸デヒドロゲナーゼ、りんご酸デヒドロゲナーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼのいずれも高い活性は、韓国の牛が少し酸性が高い状態になっており、少し肝臓の傷害が起こっている事を示している可能性があります。
放牧で育ったニュージーランドの牛の血しょう中のグルコース、コレステロール、乳酸、インシュリンとその他酵素活性は、いずれも濃厚飼料で育てられた日本と韓国の牛よりも統計的に有意に低い値を示しました。

結果

牛などの草食動物は、胃を4つ持ち、ヒトなどでは分解できない繊維質のセルロースなどを
一番目の胃(第1胃)の中にいる微生物が分解し、それを消化吸収しています。
そこへ、濃厚飼料の成分であるトウモロコシなどの穀物をエサとして与えると、PHが低下し、酸性に傾きます。
それを中和するため反芻という行為を草食動物はしますが、大量に穀物を摂取させると、反芻では酸性化が止まらずどんどん酸性化が進行します。
そうすると、第1胃内には酸性に強い乳酸菌が増え、乳酸を作り出し、ますます酸性になっていきます。
このように酸性化への悪循環が生まれます。
これを、乳酸アシドーシスと言います。 この乳酸や脂肪酸は血液を酸性にして肝臓傷害も起こしている可能性があるのです。 「草で牛を育てる」ことは、牛の健康の基本です。
アメリカでは「草だけで育てた牛」という表示制度もアメリカ農務省が作ったそうです。 「草で育てた」牛の、牛肉、牛乳は、牛の健康の基本ですが、ヒトの健康にもとても良いのです。

(翻訳・文責:伊澤)

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