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銀は神経の発達を阻害する

◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆

銀は神経の発達を阻害する

Chirstina M Powers デューク大学 アメリカ
Environmental Health Perspectives, volume 118, No1, January, 2010/04/23

毎年、何千種類もの新物質が環境に放出され、その中には、神経の発達に毒性を持つ可能性もあり、神経の発達の失調の静かな流行の原因かもしれない。
近年、銀の利用が、医学、消費者商品で急速に広がっており、ほとんどは銀ナノ粒子として使用されており、人類や環境に曝露をもたらしている。
銀ナノ粒子は、体積あたりの表面積が比較的大きいので、粒子表面上での酸化の可能性が高く、結果として、1価の銀イオン(Ag+)の放出につながる。
銀イオンが抗菌効果をもっている。銀の大人に対する神経毒性は非常に高い曝露で初めて生じるが、発生の過程では毒性が高くなる。
第1に、銀は胎盤というバリアを透過し、胎児に蓄積し、組織内濃度は20ppb(0.2マイクロモル)に達する(母体より高濃度になる)。そして、それは生後1年間継続する。第2に、銀イオンの抗菌効果は、銀イオンがDNA(遺伝子)合成を阻害し、タンパク質の機能を失わせ、酸化的ストレスを起こすことで生じている。
さらに、発達中の脳は、その高い酸素消費、特異的な細胞膜脂肪組成、成長に必要な代謝活性の高さ、抗酸化機能の低さ、大人の脳では活性酸素から守ってくれるグリア細胞が少ないこと、などから、発達中の脳は、銀に対する高い毒性を示す可能性がある。さらに、発達中の脳は複雑な構造を、時と場所を選んで構築していかなければならないので、発達中の脳の脆弱性は、銀イオンによって、細胞の複製や分化のかく乱の可能性を増大させる。

方法

神経細胞のPC12細胞を用いて、銀の神経に対する毒性を調べた。陽性対照(神経毒性が明らかになっている物質)として、殺虫剤のクロルピリフォスを用いた。

結果

未分化細胞の10マイクロモル濃度の銀イオンの1時間曝露は、50マイクロモル濃度のクロルピリフォス以上にDNA合成を阻害した。また、DNA合成阻害よりは程度は低いものの、タンパク合成も阻害した。
より長い時間の曝露は、酸化ストレス、生存性の低下、細胞数の減少を招いた。
細胞分化期(PC12細胞が未分化状態から、アセチルコリンを出す神経細胞か、ドーパミンを出す神経細胞に分化していく時期)の10マイクロモルの曝露では、より大きいDNA合成の阻害と、より大きい酸化的ストレスを起こし、選択的に軸索形成を阻害した。
1マイクロモル濃度の曝露では、未分化細胞の影響は軽減した。
しかしながら、分化期の細胞には、パターンが異なっていた。
細胞死を抑制することで細胞数が増加し、アセチルコリン型、ドーパミン型、いずれへの分化も阻害した。

結論

銀は、有名な神経毒である殺虫剤のクロルピリフォス以上に、神経の発達に毒性を及ぼす。

解説

銀を含んでいるパーソナルケア商品、抗菌商品がどんどん増えています。安全性に問題ないのなら良いのですが、銀といえども毒性はあり、かつ、ナノ化(すごく細かくしてある)してあるため、毒性が強くなっています。
そもそも銀の抗菌効果は、銀イオンが遺伝子DNA合成を阻害することで生じています。この抗菌効果が細菌に対してのみ作用するのなら良いのですが、実は人の細胞にも毒性があるのです。
今回の論文は、発達中の神経細胞(赤ちゃん)がとくに銀の毒性効果を強く受けることを、培養した神経細胞での実験で示しています。その毒性は、神経細胞に対する毒性が明らかな殺虫剤、クロルピリフォス以上の毒性でした。銀の抗菌商品に注意を!!

(伊澤)

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