HOME食品安全情報

乳幼児用粉ミルク製品は有害な
3-MCPD脂肪酸エステルを含んでいる。

◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆

Infant formula and follow-up formula may contain harmful 3-MCPD fatty acid esters.
乳幼児用粉ミルク製品は有害な3-MCPD脂肪酸エステルを含んでいる。

BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)
Opinion No.047/2007,11 December 2007.

遊離の3-モノクロロプロパン-1.2-ディオール(3-MCPD)は、液体シーズニング(タンパク加水分解物、しょうゆなど)や、高温加熱されたパン製品などの様々な食品に長い間、不純物として含まれ続けている。3-MCPDは、脂肪や塩を含む食品が製造過程で高温で加工される時に生じる。動物実験では、3-MCPDは腎細管の細胞増加(過形成)や高い濃度では、良性腫瘍を引き起こす。遺伝毒性は見つかっていない。それゆえ、動物での慢性毒性試験で見つかっている腫瘍(主に良性)は、閾値以上でのみ生じると思われる(ある濃度(閾値)以上でないと、腫瘍は生じないという意味)ヒトでの研究はない。食品安全当局による最新の研究は、マーガリン、油脂、乳製品を含む脂肪含有食品の様な、精製油に今回初めて高い濃度の3-MCPD脂肪酸エステルが含まれているのを見つけたBfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)は、提出されたデータを基に現在利用できる科学的知見をもとに結論を出した。特に乳児が乳児用粉ミルク、及び離乳食からの3-MCPDエステルの摂取量が、最悪の場合には、動物実験で考えられる安全な数値までの倍数が低すぎると判断されます。

(動物実験から得られている安全な量と乳児が摂取している量が近いことを意味しています)

それゆえドイツ連邦リスク評価研究所は健康リスクを判断してはいないが、3-MCPD量を減らす行動の必要性を考えている。バーデンビュルテンベルグ州の当局者による調査では、すべての精製植物油は、かなりの量の3-MCPDエステルを含んでいた。熱処理をしていない(たとえばそのままのオリーブオイル)油のみが3-MCPDを含んでいなかった。

3-MCPDは、高温で生成されるので精製の最終工程である脱臭工程(臭いと味を取り除く)でおそらく生成している。乳児用製品と離乳食は、植物油脂(あるいは動物油脂)を含むドライパウダーを含んでいる。

3-MCPDエステルの毒性データはありません。

3-MCPDエステルは、消化されて3-MCPDが生成すると仮定します。3-MCPDの一日耐容摂取量(TDI…一日に摂取しても大丈夫な量)は、2μg/kg体重という値が設定されています。(体重3kgの乳児なら一日に0.000006gがTDI)このことは、普通に乳児が粉ミルクなどを消化すると3-MCPDの摂取量がTDIの20倍から30倍と越えてしまうことを意味しています。

ドイツ連邦リスク評価研究所は、母乳育児が不可能な母親には粉ミルク製品の使用を続ける様、アドバイスしています。

TDI(一日耐容摂取)2μg/kg体重から精製植物油を多量にとっている大人もこのTDIを越している可能性がある。

3-MCPDの遺伝毒性

3-MCPDの経口毒性の短期及び長期試験で、腎臓が標的臓器になっています。フィッシャー344ラットでの長期試験では、腎重量増加がどの用量でもみられた。さらに、腎細管の過形成がすべての用量とオス、メスどちらにも増加した(低用量では統計的に有意でなかった)

細菌の突然変異原性試験は、ほとんどが陽性でした(S9ミックス添加では陰性)哺乳類細胞での突然変異性試験も陽性だが試験濃度(0.1〜9mg/ml)が比較的高く、適切さを疑う。

生体遺伝毒性試験(マウス脊髄小核試験、ラットUDS試験)は陰性です。それゆえ、3-MCPDは生体内で遺伝毒性はないと思われています。

3-MCPDの発ガン性

全部で四つの長期発ガン性試験があります。その内の三つは発ガン性を示さなかったが、それらは研究の質を満たしていない。フィッシャー344ラットでの4つ目の試験では、3-MCPDは、いくつかの臓器で良性腫瘍を増加させた。腫瘍は腎細管の過形成を起こす濃度より高い投与量でのみ生じた。

TDI(一日耐容摂取量)

腎細管の過形成が最低用量でも起きたので(人1mg/kg体重)これに安全係数500で割って暫定最大一日許容量(PMTDI)を2μg/kg体重に設定した(1100÷500=2)

腎の過形成

オスラット

0

1.1

5.2

28mg/kg

3匹/50匹

6/50

15/50

34/50

メスラット

0

1.4

7.0

35 mg/kg

2/50

4/50

20/50

31/50


3-MCPD量(粉ミルク)

乳児製品(粉ミルク)、離乳食から、最大で4169μg/kg(脂肪当たり)平均2568μg/kg、最低1210μg/kg(全部で10サンプル)ここから3-MCPD摂取量を計算すると

 

粉ミルク中のMCPD量

一日摂取量

一日耐容許容量の何倍か

最大

4169μg/kg

25.0μg/kg

12.5

平均

2568μg/kg

15.4

7.7

最低

1210μg/kg

7.3

3.6


その後の調査で最大8467μg/kgという乳児用製品もありました。

3-MCPD摂取量(大人)

植物油中の3-MCPD量は、平均3101μg/g脂肪、最大7356μg/g脂肪、一日に摂取する植物油は75%の人は20g以内、最大の人で80g/1日なので

3-MCPD量

植物油の摂取

MCPD量(60kg体重)

TDIの

3101μg/g(平均値)

20gだとすると

1.0μg/kg体

0.5倍

7356

20g

2.5

1.25倍

3101

80g

4.1

2倍

7356

80g

9.8

5倍


この大人の3-MCPD摂取量は、精製植物油に現在残留している平均3101μg/gの油を20g摂ると、一日耐容許容量の半分にしてしまう。もし、最大に残留している精製油を選んでしまっていると、なんと1.25倍になってしまうということです。

なおこの最大値7356μg/gはマーガリンからの値です。

HOME>食品安全情報>
名古屋生活クラブ 2009 Copyright NAGOYA SEIKATSUCLUB,INC. All Rights Reserved