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牛舎からの廃水(尿・フン)のホルモン活性
―成長促進ステロイドの関与?

◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆

The endocrine activity of beef cattle wastes:do growth-promoting steroids make a difference?
牛舎からの廃水(尿・フン)のホルモン活性―成長促進ステロイドの関与?

Sellin MK. ネブラスカメディカルセンター大学 アメリカ
Aguast Toxicol.2009 May 17;92(4):221-7

この研究の主目的はトレンボロンアセテートとエストラジオール(訳注:両方とも成長促進ホルモン)を体内に埋め込んだ牛からの廃水と(尿・フン)、そうしていない牛からの廃水(尿・フン)のホルモン活性を比較することです。

Fathead minnow(やなぎはえ?魚)を7日間、これらの牛の尿かフンに曝した。その後、肝ビテロジェニンmRNA発現と第2次性徴を比較した。(訳注:ビテロジェニン・卵黄タンパクの一種でメスへの分化を意味する)

尿はオス、メス、又どちらの尿も影響しなかった。さらに尿中のステロイドホルモン濃度も同じだった。

フンに関しては、メスへの影響はどちらもなかった。が、オスのビテロジェニンmRNAに有意な差がみられた。特にホルモンを埋め込んでいる牛のフン1.6g乾物重フン/Lに曝したオスのビテロジェニンmRNAは840倍に増加した。(埋め込んでいない牛からのフンに曝したオス及び何もしていないオスに比べて)

これらのオスはオスの第2次性徴も減少している外観だった。

ホルモンを埋め込んだ牛からの廃水(尿・フン)は女性化をもたらし、脱オス化をオスの魚にもたらしていることを示唆している。さらに、これらの影響はエストロゲン用化合物の存在のせいであり、実際ホルモン剤を埋め込んだ牛のフンの液体部分から検出された。一方、埋め込んでいない牛からは検出されなかった。この発見は(ホルモン剤を埋め込まれた)牛のフン中に内分泌かく乱物質が存在していることを示している。

解説

トレンボロンアセテートは合成の男性ホルモンで成長ホルモン作用をもつ。

エストラジオールは天然にもある女性ホルモンで同様に成長ホルモン作用をもつ。

これらの両ホルモンを牛に埋め込んで成長促進させる方法がアメリカを始めとして行われています。(日本でもこのホルモンは許可されています)。

今回の実験はこの2種類のホルモンのうち、エストラジオール(女性ホルモン)が牛のフンを通して、オスの魚をメス化、脱オス化させたことを示しています。ホルモン剤には発がん性などの危険性を伴っていますのでEUは私用を禁止し、ホルモン剤を使っている牛の輸入を禁止して、アメリカとの間で争いが起きています。日本でも以前は禁止されていましたが、アメリカとの関係もあり、許容量が設定され、使用が可能になっています。

名古屋生活クラブの上村さん、北里八雲牧場ともに使用していません。

(伊澤)

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