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日本人成人の食事から摂取されているポロニウム-210と
カリウム-40の内部被曝量

◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆

Internal exposure to 210Po and 40K from ingestion of cooked daily foodstuffs for adult in Japanese cities.
日本人成人の食事から摂取されているポロニウム-210とカリウム-40の内部被曝量

Hideo Sugiyama 国立保健医療科学院
The Journal of Toxicological Science vol34,No4,417-425,2009

放射性ポロニウム210は、2006年にイギリス国内で殺されたロシア諜報機関員の死に関与していると疑われている。食品中のこの天然の放射性物質によるヒト内部被曝は高いと見積もられているが、研究はほとんどない。国連科学委員会(UNSCEAR)2000年報告書にも、日本での食品中のポロニウム210に関するデータはない。

私達は、2007年〜2008年にかけて、国内7都市のスーパーマーケットで購入した食品で調理した食事を分析した。ポロニウム210はアルファー線分析装置で、又、カリウム40の様な天然の放射性物質はガンマー線測定装置で分析した。

結果

 

毎日の摂取量

実効線量

ポロニウム210

0.34−1.84ベクレル/日
平均0.66

0.15−0.81ミリシーベルト/年
平均0.29

カリウム40

68.5−94.2ベクレル/日
平均81.5

0.16−0.21ミリシーベルト/年
平均0.18

 

ポロニウム210 0.29ミリシーベルト と カリウム40 0.18ミリシーベルトを合わせると0.47ミリシーベルトになり、これは国連科学委員会2000年報告.0.29ミリシーベルトより大きい。カリウム40による平均実効線量(0.18ミリシーベルト)は、世界平均0.17ミリシーベルトと変わらない。日本人成人の食事による被曝としては、他の国に比べポロニウム210の被曝が大きいという特徴がある。

横浜での分析では、ポロニウム210の被曝の約70%は、魚介類からで、20%は野菜、きのこ、海藻からになっており、日本人がポロニウム210濃度が高い魚介類の摂取量が大きいことを反映している。

 

解説

ポロニウム210

ポロニウム210はウラン238の崩壊によって生じる。天然に存在する。半減期は138.4日、生物学的半減期は約50日。アルファー線を放出するので体内にとり込まれると被曝量は高くなる。ポロニウム210による致死量は体重70kgの大人の場合、

609ナノグラム(0.6マイクログラム・・・0.0000006グラム)(青酸カリ 0.15グラム)
  実効線量係数  1.2×10-6 Sv/Bq(ICRP72)

カリウム40

カリウム全体の0.0117%含まれる放射性カリウム。ガンマ線を放出する。半減期12.8億年。実効線量係数6.2×10-9Sv/Bq(ICRP72)

日本人の自然放射線による被曝は年間1.5ミリシーベルト。その内食品から0.4ミリシーベルト。空気(ラドン)から、0.4ミリシーベルトと言われています。今回の論文では、今までは知られていなかったポロニウム210から0.29ミリシーベルト被曝しているというものです。

1日平均たった0.66ベクレル。年間でも220ベクレルのわずかなポロニウム210ですが、アルファー線を放出するので被曝量は高くなります。一方カリウム40は食品由来の天然放射性物質の代表格ですが、1日平均81.5ベクレルも摂取しています。

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