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マレーシアカパール海岸地帯の石炭火力発電所による水産物の |
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◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆ | ||||||||||||
Natural radionuclide of Po210 in the edible seafood affected by coal-fired power plant industry in Kapar coastal area of Malaysia Lubna Alam Kebangsaan大学 マレーシア |
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石炭火力発電は全世界の電力の39%をしめています。国際エネルギー機関(IEA)によると、現在1年間67億トンの石炭使用量が2030年には100億トンになると予想されています。 石炭には、ウランやトリウムなどの微量の放射性物質が含まれています。石炭火力発電所で燃焼させることで、石炭の濃度の10倍のウラン、トリウムを含む副産物(灰)ができます。このフライアッシュ(灰)は、石炭火力発電所のまわりの環境の土や水を汚染します。ポロニウム210はウラン238の放射性崩壊で生じる半減期138.4日のアルファー線を出す天然に存在する放射性物質で海に存在する放射性物質の中で最も被曝量が高い物質です。ポロニウム210は様々な水産生物で蓄積されます。又、水産品の摂取をしている人々にも、とくに貝の摂取によって多くの被曝をもたらしています。 結果 海水中のポロニウム210濃度は、0.62ミリベクレル/Lで、この値はマレーシアの他の海水濃度よりも高い。この高い濃度は石炭火力発電所の影響と考えられる。 水産物中のポロニウム210濃度は、魚、ハマギギ(Arius maculatus)4.4〜6.4Bq/kg、バナナエビ(Panaeus merguiensis)45.7〜54.4Bq/kg、ザルガイ(Anadara granosa)104.3〜293.8Bq/kg、いずれも乾重量当たりです。マレーシア人の1日当たりの摂取量でこれらの水産物の摂取から生じる被曝量は1日1人当たり2083.85ミリベクレル/日・人となり、1年間の被曝量は249.3マイクロシーベルト(0.2493ミリシーベルト)となる。これらの数値は、他の国より比較的に高い。さらに、ポロニウム210はヒト体内でかなりの量のポロニウム210が体内に吸収される。一生涯(70年として)の蓄積発ガン死亡リスクは、1万人当たり24.8人となり、国際放射線防護委員会(ICRP)が出している制限量を越えている。 解説 このマレーシアの論文と日本の論文を比べてみます。日本の論文@は実際に調理した形でのポロニウム210を測定しており、水産物を直接測定したマレーシアよりも低い値になるはずです。
マレーシアの1日摂取量(Bq/日・人)が2 Bq/日・人と他の2つに比べて高いにもかかわらず、年間被曝量が一番低い理由は計算の過程が書いてないのでよくわかりません。 日本の食品による体内被曝量はカリウム40によるものが主体で0.4ミリシーベルトといわれていましたので、ポロニウムの分が新たに0.29〜0.73ミリシーベルト大幅に加わることになります。 石炭火力発電所が運転して石炭を燃焼することで、石炭中の水銀が気体になって拡散し、海洋へ吸収されることで海水中の水銀濃度が上昇し、それによって水産品の水銀濃度も上昇しています。今回の論文で石炭火力発電所からの放射性ポロニウムによる汚染は確実とはまだいえない点もありそうですが、石炭火力発電所からポロニウムを含む微粒子が拡散(99%)しているという他の論文もあります。原発がダメなことは良くわかりましたが、石炭火力発電も同様に良くない可能性が高いのです。 それにしても、放射性ポロニウムが水産品、とくに貝に大量に含まれている事実は、みすごしにできません。(伊澤) |
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