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ポロニウムと肺ガン

◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆

Polonium and Lung Cancer
ポロニウムと肺ガン

Vincenzo Zaga. AUSL ボローニャ イタリー
Journal of Oncology Volume 2011 860103. 11ページ

ポロニウムという元素には、30種類以上の放射性同位体が存在するが、その中でポロニウム210は最も大量に天然に存在し、最も危険である。ポロニウム210の半減期は138.4日で生物的半減期は46日です。ポロニウム210は高いエネルギー(5.3MeV)のアルファー線と低い確率で803keVのガンマー線も放出する。ポロニウム210は安定な鉛206に崩壊する。ポロニウムは、非常に毒性の高い元素で比放射能値(1g当たり1秒当たりの放射能)が高い。摂食した場合の最大許容量は1100ベクレルであるが、これは重さに直すとわずか6.6×10-6μgにしかならない(訳注.6.6gの1/1000の1/1000の1/1000の1/1000)

タバコに

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タバコには数多くの毛状突起がある。それは金属を、とくに鉛210とポロニウム210を蓄積する。鉛210は放射性崩壊をしてポロニウム210に変わっていくので、ポロニウム210の濃度が増加していく。

土のタバコの吸収によって天然のポロニウムの吸収以外に、こちらの方が多くの研究者が主張していますが、タバコに使われている肥料によってポロニウム210がタバコに増加している、という説があります。カルシウムリン酸肥料には、カルシウムによく似た元素のラジウムが多く含まれています。いくつかの研究によると、インドのタバコ栽培にはあまり肥料が使われていないため、アメリカのタバコに比べ、インドのタバコは6倍〜15倍も放射能が少ないということです。

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ボローニャ大学のGattavecchiaらの研究によると、タバコの中に含まれているポロニウム210によるアルファー線被曝量は75ミリベクレルで、主流煙に5ミリベクレル、サイドストリーム(副流煙)に1.2ミリベクレル、灰に68.8ミリベクレルとの報告があります。

肺ガン

100人の肺ガン患者の内85人から90人はタバコが原因といわれています。それにもかかわらず、喫煙者の20%以下しか肺ガンになりません。アルファ線による染色体DNAの傷害は、他の放射線よりも100倍以上大きい。LittleとRadfordによると、25年間タバコをすっている人の気管支の線量は、2シーベルトに達する。これは、鉛210が不溶性の粒子となって蓄積していることによって説明できる。Martellによると、気管支の累積線量は、肺ガンで死ぬ喫煙者の場合16シーベルトになる。この線量は、アルファー線によってガン化が起こるのに充分な線量です。BlackとBretthauerによると、ヘビースモーカーの1日当たりの線量は、0.83ミリシーベルト以上になるという。RedfordとHuntは、1日に2箱タバコをすう人の25年間分の線量を1年間当たり0.4シーベルト、25年間で10シーベルトと計算しています。これらの被曝量は、自然被曝量(1年当たり2ミリシーベルト×25年=50ミリシーベルト=0.05シーベルト)の150倍以上(10シーベルト÷0.05シーベルト=200倍)になります。

Marmosteinによると、ポロニウム210被曝によって、実験動物で起こる肺ガンの腺ガン(adenocarcinoma)は15ラド以下の放射性ポロニウムで起こすことができるので、1日に2箱吸う人の25年間分の線量10シーベルトの5分の1に相同します。

タバコ業界

多国籍タバコ会社は、1960年代からタバコの煙にアルファー線の放射能が存在していることを知っていましたが、戦術的にかくし続けてきました。タバコ業界はMartellの研究によってタバコの放射線量を、肥料をカルシウムリン酸肥料からアンモニウムリン酸肥料に代えることで低減できることも知っていました(1974年)。それにもかかわらず、マーテルの方法は「高くつく」と見なされていました。

解説

タバコには、リン酸肥料が多く使われています。リン酸肥料は、リン酸を多く含む鉱石を酸で溶かして作っている製品が多いので、ウラン、ラジウム、ポロニウムなど、多くの放射能を含んでいます。タバコに多くとりこまれる物質に鉛210があります。鉛210は放射能(ベータ線、ガンマ線)を出してポロニウム210に変わる。ポロニウム210はアルファ線を強力に出す。タバコの煙とともに気管支、肺に入った鉛210、ポロニウム210は不溶性で、その場所に沈着を続け、鉛210はポロニウム210に変わっていく。ポロニウムに変わるとアルファ線を出して崩壊して安定な鉛206に変わる。

問題は、アルファ線が他の放射線に比べてひときわ危険であるという点です。この論文ではDNA傷害性が他の放射線の100倍だとふれてありますが、一般的にはアルファ線は他の放射線の20倍危険だということになっています(ICRP)。

放射線の人体への影響を表わす単位にシーベルトという単位があります。発ガン影響は、
1Svで5.5×10-2(0.055)
1シーベルトを被曝すると5.5%の人が発ガンするというものです。逆に言うと、100人の人が1シーベルト被曝すると5.5人がガンになるというものです。

タバコを吸うことで

 

 

発ガンリスク(伊沢の計算)

LittleとRadford

25年で     2シーベル

2×5.5%=11%

BlackとBretthauer

25年に直すと7.5シーベルト
(0.83×365×25÷1000)

7.5×5.5=41%

RadfordとHunt

25年で     10シーベルト

10×5.5=55%

 

以上の様な計算になります。
タバコの中には発ガン性化学物質もあるので、ポロニウム210と相乗的に作用して肺ガンなどの多くのガンを起こしているはずです。タバコにはこんなに高いリスクがあるのです。また、タバコ産業はかくし続けてきたのです。

タバコのポロニウム210の元の原因のリン酸肥料は広く使われており、家畜のエサに使われてる場合もあります。(伊澤)
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