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Mutational signatures of ionizing radiation in second malignancy
2次発ガン(放射線治療後の発ガン)の放射線による突然変異の形
Sam Behjati サンガー研究所 ケンブリッジ大学 イギリス
Nature communications 12 Sep 2016
要旨
生体の放射線被曝後に生じる突然変異の形(様式)は、今まで、よくわかっていなかった。いろいろな種類の異なる2次発ガン12種類の突然変異の形を調査した。ガンの種類に関わらず2種類の体細胞突然変異の形が見つかった。放射線を受けていないガン319種と比べて放射線によるガンは、遺伝子全体で201個余分な(中央値で)欠失(サイズは1〜100塩基)があった。放射線を受けていない欠失とちがって、放射線による欠失は、ゲノム全体に均一で配列や複製のタイミング、クロマチン構造とも関係がなかった。
更に逆位(balanced)も増加していた。これら欠失と逆位の両方ともがドライバー変異(ガン化につながる変異)を作り出している。
この様に放射線は発ガンにつながる特徴的な変異を作り出している。
欠失・・・遺伝子が失われること
逆位・・・遺伝子が逆の向きでつながってしまうこと
解説
放射線の影響に関して、広島、長崎の被曝の研究が大きな役割をしめていますが、いろいろ不確定の部分もあり、いろいろな異論のでる余地があります。今回の研究は、遺伝子配列をほぼ全部にわたって解析したもので放射線がどういう変異をもらたしたか、遺伝子配列で明らかにした画期的な論文です。要旨の中にも書かれていますが、放射線による欠失は「ゲノム全体に均一で」という部分は、タバコや紫外線などの放射線以外の変異原の場合、変異は、特定の部分に集中している特徴があることと対になっています。
放射線は人体組織の中に透過する過程で、偶然に遺伝子DNAと相互作用(放射線による活性酸素で)するので、タバコや紫外線といった他の変異原が遺伝子の高次構造の特定の部位に変異を集中させているのに対して、遺伝子全体に均一に変異をもたらしています。また、本文の中で著者らは、「放射線は、よく知られた発ガン物質であるのに、突然変異の数が比較的少ないのは驚くべきかもしれない。タバコ、日光、アリストロチック酸(ハーブ)によるガンで見られるより、かなり(放射線)は変異が少ない。それは、ガンに対する寄与リスクは高いのだけど、絶対リスクそのものが低い事をおそらく反映している。
たとえば、乳ガンの放射線治療後に起きる血管肉腫の90%以上は放射線によるものだけれど、放射線照射を受けた1000人中の1人しか血管肉腫になりません。放射線は照射された組織のバイスタンダー細胞を明らかに発ガンさせるが、細胞1つずつの絶対リスクは高くなく、その後のドライバー変異(ガンを起こす変異)が必要だろう。」
バイスタンダー効果
放射線照射されていない細胞が近くの照射された細胞からシグナルを受けとり、変異したり、ガン化したりする。
ドライバー変異 ガン化につながっていく変異。そうでない変異はパッセンジャー変異。
論文解説 名古屋生活クラブ 伊澤
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