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未精製油のキャノロールがラジカルを除去する
◆ 論文で紹介します(翻訳:伊澤) ◆
Isolation, identification, and structure of a potent alkyl-peroxyl radecal scavenger in crude canola oil, canolol.
未精製のナタネ油中に含まれる脂質過酸化ラジカル除去能を持つ“キャノロール”の分離と構造
熊本大学 崇城大学 前田

酸化した油の中に含まれる脂質過酸化物は、赤身の肉に含まれている、ミオグロビン、ヘモグロビン、ヘムの触媒作用により、脂質ラジカルになるので好ましくない成分です。脂質ラジカルは、生化学的に反応性が高く、核酸(遺伝子)やタンパク質を傷つけることによって、細胞を傷害します。私達は、未精製のナタネ油から脂質ラジカル除去能を持つ成分を分離して、キャノロールと名づけ、構造を、4−ビニル−2,6−ジメトキシフェノールと決定した。未精製のナタネ油中に含まれているキャノロールは焙煎によって、大幅に増加し、精製した油では減少した。
 脂質ラジカル除去能は、未精製の油で最も高く、精製の各段階で減少し、純粋な精製油で最も低かった。
 キャノロールは焙煎によって生成している。キャノロールは脂質ラジカル除去能が最も高い物質の1つであり、その能力はよく知られている。

α−トコフェロール(ビタミンE)、ビタミンC、β−カロテン、ルティン(そばに含まれている)、ケルセチンなどの抗酸化物質よりも高い。

用語解説

ラジカル ・・・活性酸素はラジカルの中の1つで、活性酸素同様に細胞に害をなします。

精製 ・・・市販されている油は、色も香りも除去されて、純粋油だけにされています。日持ちを向上させるため。

(参照:「精製油と未精製油の差」)



生じた脂質ラジカルを除去することによって、DNA傷害、発ガンへつながるのを阻止するのが抗酸化物質で、ビタミンC、E、βカロテンなどがよく知られていますが、未精製のナタネ油に含まれるキャノロールはこれらの物質以上の力を持っています。エキストラバージンのオリーブ油が最も高く、次がごま油、その次がナタネ油です。

下の表は、精製の段階ごとにキャノロール及び脂質ラジカル除去能が減っていくことを示した表です。




IPOX・・・ 50%の脂質ラジカルを除去するのに必要な量。

量が少ないほど、ラジカル除去能が高い。脱ガムしただけの油と、脱臭油と比べると、205倍以上のラジカル除去能の違いがあります。総ビタミンEでみると、785/409≒1.9倍なので、ビタミンEはラジカル除去にあまり有効でないことも分かります。


ラジカルによってもたらされていると思われている病気、 炎症、ガン、動脈硬化、神経変性していく病気(筋ジストロフィー、パーキンソン病、アルツハイマー病)などに効果があるかもしれない。

この研究は、現在の工業的精製法が、ラジカル除去能を保持できる様な方法に変わっていく必要を示しています。

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