みかんや野菜でもおなじみの黒田さんからメッセージ!!

■私のお米は自然生態系耕土と豊コシヒカリ

黒田さん

私のお米づくりは、肥料に後藤清人さんが生みの親である自然生態系耕土を利用し、品種は井原豊さんが長年研究されてきた豊コシヒカリを取り入れています。このどちらも企業や研究者ではなく、ひたすら農に向き合ってきた一お百姓さんなのです。今回はこの井原さんについてお話させていただきます。

■井原さんといえば「への字稲作」

まず、井原さんといえば「への字稲作」です。「へ」とは稲の生長をグラフに表したときの生育曲線を表しています。このへの字曲線は、私たち人間もそうですが、誕生してから徐々に成長の度合いを増して行き、ある時点でピークを迎え、以後はゆっくり下降して老化し、その一生を終えます。いわば生物にとってはきわめて自然な現象を表しています。

私自身は農学部で「低投入稲作」を提唱された橋川潮先生の講義を受け、戦後のお米を増産させるための稲作「V字理論」が、沢山の肥料など資材を必要とし、稲という植物の自然本来の成長からかけ離れた技術の負の面であることを学びました。肥料や畜糞堆肥、農薬といった農業資材、排出物やエネルギー消費の大きい農業機械や設備が、環境汚染を引き起こしているという現実は見過ごすことができないほどで、自然と触れあう健康的なお仕事=農業というイメージとはかけ離れた、環境負荷の高い「産業」なのですから。

それに対し、低投入とは田んぼに肥料などの物質と労力などのエネルギーを極力投入せずに、稲の持つ潜在的な能力を最大限に引き出して増収を目指すという、省エネ、環境保全を目指す技術のことなのです。この「低投入」と「への字稲作」、稲の本来の力と自然本来の力を利用した自然の恵み、そんなお米ができることを目指しています。

 

黒田さんと田んぼ

■豊コシヒカリの特徴

井原さんの名を冠した「豊コシヒカリ」、これは彼がコシヒカリを栽培しながら、その中から18年の歳月をかけて選抜育種した稲です

DNAを分析するとコシヒカリとまったく同じ検査結果が出るのですが、対病性と耐倒伏性を改善し、食味もコシヒカリと変わらない、あるいはそれ以上(?)の品種を生み出したのです。特別な学もなく、地位も名もなき大衆の中に、百姓であることに誇りを持ち、情熱を持って農の道に打ち込み、深い洞察力を持って不可思議な自然に立ち向かい、まったく新しく素晴らしいものを生み出す、そんな人々に私は強く惹かれるし、ただただ尊敬の念を抱くばかりです。

■東日本大地震を通じて

未曾有の震災によって、被災地では有形無形のあらゆるものが無に帰されてしまったように感じます。形のない、生活・労働の中で培われてきたその土地土地の人々の知恵、文化などなど、失われ永久に復元しえないものがあるかもしれません。私自身が百姓として、井原さんや後藤さんのように、また、あまた無名の人々のように、次の世代に引き継がれる価値ある何かを生み出すような自信は、とてもありませんが、今年も豊コシヒカリを育てながら、それら民衆の系譜の最末端にかろうじてでも繋がっていたいと思うばかりです。

まだお米づくりを始めて3年目の黒田さん、いろいろ模索しながら自然の力を味方につけようと日々、精進の毎日です。応援よろしくお願いします。

2011年4月5週