サルモネラ食中毒についてA

前回の続きですが、じゃあ「名古屋生活クラブの生産者はどうなの??」という疑問に行き着いたと思います。そこで、今まで経験・勉強してきた段階でのリスク評価について正直にお伝えしたいと思います。
今まで「サルモネラ食中毒になったけど、卵かも?」という声をここ数10年で数回実はお聞きしました。しかし、どれも卵が原因だったと断定されたことはありませんでした。(それは色んな物を食べたりして、どれが原因かなかなか特定できないから)

でも、販売者としてリスクを下げなければという思いをずっと抱えております。

現段階でリスク評価としては、リスクが高いと思われる順に櫛田養鶏→みたぼら農園→田村さんの卵としています。※誤解を招きかねないかもしれませんが、あくまで順番です。櫛田さんの卵が危ないという意味ではありません。

理由ですが

@飼育方法の違い:

櫛田さんはケージ飼いで他2箇所は平飼いであること。これは前回お伝えした飼育方法のSE発生率の数値を見れば一目瞭然です。粗放的な飼育方法ほどサルモネラにとっては住みづらい環境と言えるからです。

A外気温:

櫛田さん(稲沢市)、みたぼら農園(長野県下伊那郡)、田村(北海道知床)に位置します。サルモネラ菌の増殖には温度が大きく影響するため飼育環境としては夏場涼しい環境ほどサルモネラが増殖しにくい。

B衛生面:

ケージ飼いの場合、鶏舎内にほこりや糞がケージに付着します。そしてそれが他の鶏の体内に入る可能性が高いので、1羽が病気をすると一気に拡散する恐れがあるのです。平飼いは風通しがよく、土が常に乾燥していて、鶏の密度が低いためケージ飼いより病気のリスクが低いのです。

 

理由を3つ並べてみましたが、サルモネラ菌にとって重要なのはまずこの3つです。他の原因としては飼料、水、消毒、野生動物などがあります。

そこで、今年は櫛田さんを中心に対策を試みました

櫛田さんとサルモネラ検査、卵の選別強化、冷蔵管理、パックの変更などの話をしました。櫛田さんに環境中のサルモネラ菌検査をしてもらいましたが、3/22にサンプリングした飼料、糞、ほこり、卵からはサルモネラ陰性という結果でした。今後も定期的に検査をしてもらう予定です。

卵の選別については、ひび割れ(見えるひび、見えないひびがあります)の卵と汚卵(糞がついた卵)の選別が必要なのですが、弊社の生産者はGPセンターを持っているわけではないので、選別については手作業となります。目で見えるひびが入った卵と汚卵、異常卵を取り除いています。大きなGPセンターでは数億円もするひび割れの感知器を設備しているところもありますが、これは金銭的に不可能です。

温度管理はこれまで生産者のところで冷蔵庫に入れて管理するなどはしていませんでした。生産者の間では常温管理が基本のようです。櫛田さんについては夏季の間、採卵してから納品までの間、冷蔵保管してもらえるように依頼しました。他2箇所は涼しい環境でもありますので、今のところは温度管理について要望していません。

名古屋生活クラブに入荷してからは冷蔵管理をしています。

衛生面では櫛田さんは年に1回鶏舎の消毒をしています。ねずみについては完全に除去できていませんがねずみ取りの設置を常に行っています。

【ちなみに参考にと思い、田村さんにどんな対策をしていますか?と聞いてみました】

鶏舎を半年から1年休ませる期間を設けていることで、菌や虫がその間死滅する。(1年から1年半使った鶏舎を休ませる)次に本来220坪に2千羽飼育できるが、約1千羽しか飼育していない(飼育密度が低い)。

【今までに感じてきたこと】

現在扱っていない卵の生産者何軒かとここ1年でお話をしたことがあります。サルモネラフリーでうたっているところが多いこと。しかし、リスクはゼロではないということを感じました。

サルモネラフリーでうたって、生で食べてくださいとうたっていますが、もし食中毒が出たらどうなるんでしょうか。

卵が原因だと特定にいたらずそのまま売り続けるだけかもしれません。例え色んな対策を取っているところでも、なにせ目に見えない敵です。どこから侵入してくるかわかりません。

生産者がリスクを減らしても、流通や消費者側の扱いが悪ければリスクは高くなってしまいます。じめっとした暑い夏を過ごす我々にとって、サルモネラのリスクがゼロってことはない!そう感じます。
(サルモネラ食中毒はもちろん卵についてだけではありません)

見えない敵と戦うにはこちらも構える必要がある。完全な安心は得られないのですから。サルモネラと上手く利巧に付き合っていく必要があるのではないでしょうか。生産者をまず正すことも大事ですし、私たちの知識や理解の向上も大事なのだとつくづく感じました。

卵1つ選ぶにしても色んな選び方があると思います。

何を選ぶかはやはり自分で決めることです。私たちはそのお手伝いをする立場。今後も色んな情報と共に安全な食品をお届けしていきたいと思います。

(もみのき 2011年6月2週)

追記:2015年5月をもって、みたぼら農園の卵の取り扱いは終了しました。