ビスフェノールAについて 〜配達員便り〜より(第2回)

2010年11月24日 掲載

以前の配達員便りで、ビスフェノールA(BPA)のことについて触れました。プラスチック製哺乳瓶や缶詰の内面塗装などに使用されており、内分泌系への影響が懸念されている化学物質です。しばらく配達員便りでは、このBPAのことについて、連載してまいりたいと思います。

日本の缶詰に含まれるBPA

BPAは、大気、公共用水域、下水道に存在し、食物、飲料水、地下水からも検出されていますが、今回は、日本の畜水産缶詰食品中にどの程度のBPAが含まれているのかをご紹介しましょう(2006年東京都健康安全研究センター年報より)。缶詰食品中の中でも畜肉や水産品の缶詰食品で比較的高濃度のBPAが検出されています。その値は、メーカーによって異なるのですが、最大で某社のマス水煮から249ng/g(1ngは10億分の1g)のBPAが検出されました。このマス水煮200gを体重50kgのヒトが1日に摂取したと仮定すると、BPAの1日の摂取量は0.996μg(=約0.001mg)/kg体重/日となります。また、同一銘柄で賞味期限の異なる2ロットを分析すると、いずれのメーカーも賞味期限の新しいものの方がBPAの含有量が減少しています。例えば、某社のサンマ味付は、206ngであったものが約3年後の賞味期限のものでは定量限界以下に激減しています。これは、各メーカーが缶詰の内面コーティ ングの材質をBPAの溶出し易いポリ塩化ビニルやエポキシ樹脂から、溶出し難いポリエチレンテレフタラートに変更したりするなどの改良を加えたことによると考えられています。

賞味期限が異なる2ロットの比較(某社のサンマ味付の場合)

賞味期限

BPA含有量(ng/g)

内面コーティングの材質

2005.1.25

206

エポキシ樹脂

2007.9.27

tr

ポリエチレンテレフタラート

     1ng/g≦tr<3ng/g

各国で異なるBPAの無毒性量基準値

さて、BPAの各国規制については、どうなっているのでしょうか。その無毒性量(動物実験において有害な影響が観察されない最大量)は、米国の国家毒性プログラム(NTP)が50mg/kg体重/日、欧州食品安全機関(EFSA)が5mg/kg体重/日としており、日本はNTPによる評価に準拠しています。また、耐用一日摂取量(食品の消費に伴い摂取される汚染物質に対してヒトが許容できる量;mg/kg体重/日)は、NTP、日本、EFSAは0.05mg、欧州連合の食品科学委員会(SFC)は0.01mgであり、研究者によっては、0.04mgとも0.02mgとも言われています。上述した缶詰からの摂取量(約0.001mg)は、これら
の基準値を十分に下回っています。しかし、近年、極めて低い容量の摂取(低容量曝露)により、神経や行動、乳腺や前立腺への影響等が認められるという報告がされており、米国、カナダでは乳幼児への影響に関して懸念を示す報告書が公表されています。

BPAの耐用一日摂取量の例

NTP、日本、EFSA

0.05mg

Porrini,et al

0.04mg

Nagel,et al

0.02mg

SFC

0.01mg

 

今後は、現在設定されている耐用一日摂取量が果たして妥当なのかどうかということを検討し、皆様にご報告していきたいと思います。 (新山雅広)

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