ビスフェノールAについて 〜配達員便り〜より(第3回)
2010年11月24日 掲載引き続き、ビスフェノールA(BPA)のことについて話題にしてみたいと思います。缶詰の内面塗装などに使用されており、内分泌系への影響が懸念されている化学物質です。今回は、韓国の缶詰事情についてご報告すると共に、日本の缶詰との比較も試みてみたいと思います。
韓国の缶詰事情
(J Toxicol Environ Health A. 2009;72(21-22):1327-35.より)
7種類の缶詰食品(合計61サンプル)のBPA濃度が分析 されています。表をご覧下さい。
韓国の缶詰食品中のBPA濃度(μg/kg)
種類 |
サンプル数 |
平均値 |
最大値 |
コーヒー |
5 |
45.51 |
136.14 |
ツナ |
8 |
43.70 |
116.88 |
魚 |
11 |
39.78 |
125.25 |
肉 |
13 |
24.49 |
98.30 |
果物 |
9 |
8.60 |
54.56 |
茶 |
3 |
8.30 |
14.26 |
野菜 |
12 |
3.10 |
21.50 |
前回もご報告いたしましたが、やはり畜肉や水産品の缶詰食品で比較的高濃度のBPAが検出されています。さらに、注目されるものとして、コーヒーがあげられ、最も高濃度のBPAが検出されています。
韓国人の一日当たりの缶詰の消費量に基づくと、BPAの曝露量は、1.509μg/kg体重/日と算出され、主要国際機関の定めた耐用一日摂取量;50μg/kg体重/日を十分に下回っており、安全であるということがこの論文では述べられています。
日本の缶詰との比較
前回、日本の畜水産缶詰食品中のBPA濃度について触れました(2006年東京都健康安全研究センター年報より)。それをまとめると、1)日本の缶詰のBPA濃度は、メーカーによって異なる、2)近年、内面コーティングの材質あるいは缶詰の構造上の改良がなされ、BPAが溶出し難くなっている、ということがあげられます。表をご覧下さい。これは、BPAが溶出し難く改良された後のデータです。これ以前の缶詰(購入2003年;賞味期限2004〜2005年)では、各社とも1.3〜23倍以上ものBPAが含有されていました。さて、8社(A〜K社)の総計16サンプルから、BPA濃度の平均値を算出してみましょう(仮に、検出限界値未満;ndを1μg/kg、定量限界値未満;trを3μg/kgとします)。韓国の缶詰の最大値を上回るI社のたらばがに水煮のような、202μg/kgという値が含まれているにも関わらず、平均値は25.4となり、韓国の缶詰(魚)の平均値(39.78μg/kg)の約6割の値です。なお、データは割愛しますが、日本の畜水産缶詰は、内面コーティングなどの改良前であっても、BPA濃度の平均値は36.1でした。
以上のことから、日本の畜水産缶詰は、韓国のものに対して、比較的安全だと言えると思われます。
日本の畜水産缶詰食品中のBPA含有量(2004年1月および2005年6月購入)
メーカー |
試料 |
賞味期限 |
BPA含有量 |
(年月日) |
(μg/kg) |
||
A |
サケ水煮 |
2007.6.22 |
21 |
A |
いか味付 |
2007.11.15 |
5 |
B |
サンマ蒲焼A |
2007.7.4 |
13 |
B |
サンマ蒲焼B |
2008.5.11 |
nd |
C |
サンマ味付 |
2008.4.4 |
nd |
C |
マグロ味付 |
2008.3.29 |
5 |
C |
カツオ油漬 |
2008.4.17 |
7 |
D |
イワシ味付 |
2008.4.18 |
7 |
D |
マス水煮 |
2007.5.14 |
11 |
D |
サンマ味付 |
2007.9.27 |
tr |
D |
ずわいがに水煮 |
2008.5.10 |
60 |
F |
マグロ水煮 |
2007.8.22 |
6 |
I |
たらばがに水煮 |
2008.4.13 |
202 |
I |
ほたて水煮 |
2007.6.16 |
52 |
J |
赤貝味付 |
2008.4.1 |
10 |
K |
やきとり |
2008.4.22 |
tr |
nd<1μg/kg, 1μg/kg≦tr<3μg/kg
今回、韓国と日本の缶詰事情についてみてきました。いずれの論文も現在の基準に従えば、通常の摂取量なら、問題はないという結論のようです。しかし、近年、極めて低い容量の曝露でも健康への影響が認められるという報告があります。従って、韓国で言えば、BPA含有量の高いコーヒー、畜水産缶詰や、日本で言えば、I社のような缶詰の過剰摂取は控えるべきではないでしょうか。
次回は、低容量曝露の影響に関する事例を取り上げてみたいと思います。(新山雅広)
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