ビスフェノールAについて 〜配達員便り〜より(第4回)

2010年12月14日 掲載

引き続き、ビスフェノールA(BPA)のことについて話題にしてみたいと思います。缶詰の内面塗装などに使用されており、内分泌系への影響が懸念されている化学物質です。今回は、最新の文献から低用量曝露による影響について調べてみました。

低容量曝露でも悪影響の出た動物実験

主要な国際的機関の定めるBPAの耐用一日摂取量が50μg/kg体重/日であることは既にご報告してきました。しかし、それよりも遥かに低い用量で影響があるという動物実験(生殖・発生毒性試験)はたくさんありました。その最たるものは、0.1μg/kg体重/日という極めて低い曝露量です(表1)。

表1 BPAに関する最近の文献(低用量試験結果の一例)

動物種

試験種

投与量

結 果

文献


マウス
CD-1


経口
妊娠9-16日


0、0.1110、100、1000μg/kg体重/日

全ての投与群で生殖器系への影響がみられたが、BPA0.1μg/kg体重/日投与群が最も影響が大きく、子宮がん及び子宮内ポリープが観察された。


発がん性


Newboldら
2009

 

BPAは、主要な国際的機関から発がん性については認定されていませんが、この実験は、発がん性を示唆する実験データです。さて、0.1μg/kg体重/日とは一体どれほどの摂取量なのでしょう?

日本の畜水産缶詰のBPA濃度の平均値が25.4μg/kgであるということを前回の配達員便りで述べましたが、この平均的な缶詰を体重50kgのヒトが1日に一缶(200g)摂取した場合、ちょ うど摂取量は0.1μg/kg体重/日となります。つまり、単純には畜水産缶詰は、一日に一個未満にした方が良いということになります。しかし、前回の配達員便りで示した表2をもう一度ご覧下さい。一部のBPA高濃度の缶詰を除き、大半が平均値を下回っています。そして、毎日、畜水産缶詰を一個以上食べるヒトも少
ないでしょう。以上のことから、缶詰食品の消費に伴い摂取されるBPAに対してあまり過敏になる必要はないのかもしれません。

 

表2 日本の畜水産缶詰食品中のBPA含有量(2004年1月および2005年6月購入)

メーカー

試料

賞味期限

BPA含有量

(年月日)

(μg/kg)

A

サケ水煮

2007.6.22

21

A

いか味付

2007.11.15

5

B

サンマ蒲焼A

2007.7.4

13

B

サンマ蒲焼B

2008.5.11

nd

C

サンマ味付

2008.4.4

nd

C

マグロ味付

2008.3.29

5

C

カツオ油漬

2008.4.17

7

D

イワシ味付

2008.4.18

7

D

マス水煮

2007.5.14

11

D

サンマ味付

2007.9.27

tr

D

ずわいがに水煮

2008.5.10

60

F

マグロ水煮

2007.8.22

6

I

たらばがに水煮

2008.4.13

202

I

ほたて水煮

2007.6.16

52

J

赤貝味付

2008.4.1

10

K

やきとり

2008.4.22

tr

nd<1μg/kg, 1μg/kg≦tr<3μg/kg 

 

しかし、BPAは、多くの試験結果から、内分泌系及び生殖系への影響が懸念される物質であることは間違いないのです。そういうものが、私たちの身の回りに普通に存在し、知らず知らずのうちに摂取している可能性があることは知っておくべきだと思います。

今回、私は、食品安全委員会のBPA評価書(案)も読みました。危険な報告に関しては、再現性がない実験、不明な点が多い、などという理由でうやむやにしているように感じました。期せずして5月7日の朝日新聞「食の安全に科学の目」という記事中に次のような言葉を見つけました。「化学物質のリスクは白か黒かでとらえられがちだが、単純に言い切れるものではない」

しかし、灰色は決して白ではないのだし、白か黒か分かってからでは遅いということも考慮しなくてはならないと思いました。(新山雅広)

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  • 第4回 ビスフェノールAについて 〜配達員便り〜より
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